輪島塗とは

輪島塗とは

ジャパンは輪島

普段使い

漆器の洗いかた、片づけかた

  • 塗り物だけを、 まとめて洗う

    お湯の中で異質の材料のものとぶつかりあうのは、傷のもと。

    指輪は外したほうが安心。

    ガラスや陶磁器とは別にして、同じ手つきで洗いものを楽しんで下さい。

  • ひたしておいて、 ぬるま湯で

    漆器を使ったあとは、料理の滓(かす)がこびりつかないよう、乾かぬうちに流しへ。 すぐに洗いあげる時間がなかったら、もともと水の好きな漆器、毎日でなければ一晩水に浮かしておいても平気。

    ただしこれは本物の漆器に限ります。

  • よごれおとしは、 使い古しの布で

    こびりついた汚れはなるべく湯水でゆるませて、布でぬぐいます。

    実際的に洗濯もかねて、台ぶきんなどで洗えば大丈夫。

    使い古した布やスポンジでぬぐいとるように洗うとよいでしょう。

  • 中性洗剤を薄めにつかう

    使いこんだ漆器は、長く仕舞っておくと、ごく小さな点々状のカビがつきます。

    漆の塗膜は酸にもアルカリにもおかされない強固な素材です。

    けれども表面の色艶を長保ちさせるには、強い酸、アルカリや漂白剤などは避けたい。 洗い手の肌にもやさしい中性洗剤をつかえば充分です。

  • 洗いあげには熱めのお湯を

    汚れをとって、最後の洗いあげには、ちょっと熱めのお湯をくぐらせて水を切れば、温まったぬくもりで余分な水気もきれいに蒸発。

    しばらく置けば紙で包むなど次の作業に移れます。

  • 漆器の洗いかた、片づけかた
  • 漆器の洗いかた、片づけかた

漆器の仕舞い方

  • 漆器は漆器でまとめて

    水切かごで充分乾燥させた漆器。使いまわしのものは食器棚に、めったに使わないものは箱入りにして。

    漆器は、ガラス器や、やきものとぶつけあいたくない。重ねあわせたくない。

    漆器は漆器どうし、まとめて収納してください。

  • 使いまわす器は、 見える収納

    料理を盛るには色、柄、肌あい、大きさ、深さ、それぞれのとりあわせの妙で、料理が活き、食器が活きます。

    使いまわしの食器は、目で見て探せるように、見える収納がおすすめです。

  • 「輪島塗」だから 修繕がききます

    漆器はよく使いまわすほど、ぶつけたり、火にあてたりのうっかり事故もあり、そうでなくても長い間には、やはり傷が目立ってきます。

    使いなじんできただけに、修繕して使いつづけたい。

    修繕がきく(傷みをなおせる)のは、丈大な下地に塗り重ねた輪島塗ならではの特徴です。

  • カビは漆器の勲章

    使いこんだ漆器は、長く仕舞っておくと、ごく小さな点々状のカビがつきます。

    仕舞うまえによく洗ったとしても、使い手の手の脂などがしみこんで使い艶をおびているような器では、カビがつくことがあります。

    使い艶あってのカビですから漆器の勲章のようなものです。

    塗師屋の方ではこれを「星が浮いてる」といっていますが、拭いてあげるとすぐにイキイキしてきます。

漆器がいたんだら

修理は輪島ことばで「なおしもん」

  • 「なおしもん」 「こしらえもん」

    漆器が傷ついたり変色したりで修理に出されたものを、輪島ことばで「なおしもん」といいます。

    「なおしもん」と似たことばが「こしらえもん」。
    「こしらえもん」は中塗りのおわったものを研(と)いだ段階をいいます。

    中塗りの研ぎ(と)の次は上塗りです。

    この段階で入念に手入れしておかないと、欠点はすべて上塗りにあらわれてきます。
    だから念には念を入れる気持が「こしらえもん」の一語にこめられています。

    修理のほとんどは、上塗りを研ぎ(と)はがして「こしらえもん」の段階に戻し、手入れしてから上塗りをやりなおす、という手順になります。

  • 修理がきくのは、 輪島の漆器ならでは

    本堅地(ほんかたじ)の輪島の漆器は、下地付けがしっかりしており、中塗りが下地によくくっついている。

    だから傷みの度合に応じて、工程をさかのぼって、修理ができるのです。

  • 食べてるときは、 キズつかん

    漆器は長寿素材、半永久といっていい耐久材ですが、使いまわすうちにさまざまなキズを負います。 仕舞いかた、置場所によっては光線や温湿度による変質も起こります。 道具も一生のうちには、いろいろの事態にめぐりあって、傷や病いにかかることがあるんですね。

    「なおしもん」の話をしているうちにとび出した、 ある塗師屋(ぬしや)さんの名言。 「食べてるうちはキズつかん」。

    お腕にカジりついたりしないかぎり食器は、食べているうちは安全なんです。

    食べおわってはこぶとき、洗うとき、仕舞うとき――食器として働いてナイとき傷を受ける。

「なおしもん」する意昧

  • 時を刻んだ道具の価値

    使った人の「時間」がこめられている道具は捨てられない。
    時を刻んだ道具は、おいそれと捨てたくない。

  • 椀は、うけつぐことのできる食器

    食器、食具は個人に属する。おじいちゃんのお腕、おばあちゃんのお箸。

    これは持ち主が亡くなると、処置に困る。

    葬儀には、その人の用いた茶腕を割ったり著を埋めたりした風習がありました。

    茶腕は形見に貰っても、それで飯を食う気にはなれない。

    箸も、受け継いで使いたくないもの。でも腕は、内側を塗りかえせば使えます。

  • 「なおして使えること」は大事

    漆器が、なおして使いつづけられる道具であることはいまや貴重なことではないでしょうか。 道具を、いとおしんで使っていけることに何かホッとする、心をなごませるものがある。

    いまどきの工業製品は、なおしがきかない。

    なんかツレナイところがあって、簡単に捨てられる(捨てる気になれる)。

    そこが、ちょっとコワイと思いませんか。

  • 木地も価値である

    漆器は木地、下地、塗りから成っている。木地も時間のかかった資源を用いて、手間ひまかけてつくられている。

    漆器は、塗りがダメになっても、木地としてまだ半分は価値が残っている。それを捨てては、やっぱりイケナイ。

    省資源の叫ばれている現代。 「なおしもん」のできる「ものの体系」
    ――省資源のしくみは、昔からあったのです。

  • 塗りなおすと文夫になる?

    【漆器を修理】

    「なおしもん」すると、モトより丈夫にナル、という人がいますが――たんに上塗りを塗り重ねるだけなら、塗りが厚くなるわけで、丈夫になるといえます。

    でも、上塗りにモンダイがあっての修理なら上塗りを研ぎ(と)はがして塗りなおすのですから、モトより丈夫になるとはいえません。

    深キズを直す場合はどうでしょう。

    人間の場合はよく、骨折すると、そこはモトより丈夫になる、というのに似ています。 まわりとのバランスがよくなくなるので、近くが折れやすいのです。

    いたみのはげしい業務用の場合は、修理は三回ぐらいが限度で、それ以上は全体にムリがくる。 修理するほど丈夫になるわけではない、というのが結論です。

  • 気分刷新、模様替え劾果

    使い古したお腕など、内側だけでも、朱を黒に塗り変えたりすると印象がかわって気分一新。

    加飾が時代にあわなくなって、古くさく見えてきたのを無地にしたり、新しい模様をデザインしたり、という楽しみかたもあります。

  • 穢(けが)れ感の清浄化

    骨董屋で見つけたお重、外観が気に入ったので買ったような場合、誰が使ったかわからないものなので料理を入れる気がしません。

    でも、内側を塗り直せば、よごれ、というよりけがれ感がなくなります。

    「なおしもん」にはそんな、清浄化の効果もあります。